映画やアニメーション、ゲームなど映像作品の画面の美しさは、以前と比較しても飛躍的に向上しています。
こうした息を呑むほど美しい画面描写を実現しているのが、コンピュータのGPU(Graphics Processing Unit)です。
高度な映像処理のためには、コンピュータのCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)の性能が高いことはもちろんですが、高度な画像処理性能も必須となります。
GPUは、こうした高い性能を求められる画像処理に特化した半導体プロセッサで、現在のコンピュータではCPUに並ぶ性能を持つ部品の一つとなっています。
また、VRやAR、仮想空間でアバターなどを使うメタバースなど急速に注目を浴びている分野では、GPUが欠かせないものとなっています。
今回は、このGPUについて詳しく解説します。
目次
GPUとCPUの違いは何?
みなさんは、コンピュータで高い演算能力を持ち、計算などの処理を行う部品といえばCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)を思い浮かべるのではないでしょうか。
CPUは、コンピュータ全体の計算処理を担う半導体で、コンピュータの高い性能を実現するためには欠かせないパーツです。
連続的な計算処理を得意とし、人間に例えると脳にあたります。
このCPUと同じくらい高い性能を持ち、高度で複雑な画像処理を行う半導体がGPU(Graphics Processing Unit)です。
並列的な計算処理を得意とします。
つまり、GPUとは「コンピュータ上で画像処理を専門に行う半導体」であると言えます。
ここで、CPUとGPUの違いを、仮想現実(VR)を使用したゲームでの処理を例に見てみましょう。
VRは「限りなく実体験に近い体験を得られる」ことからゲームや音楽のライブなど幅広く利用され始めています。
これには、高度な画像処理が必要で膨大な計算処理を必要とします。
GPUによる映像を「ゲーム」として成立させるためには、人々がコントローラーで操作した内容を画面に反映させる必要があります。
CPUは、こうした映像描写以外のコマンドなどの処理を担当します。
GPUは、映像描写に関する計算処理を担当し、リアルな体験を人々に提供します。
なぜGPUが必要となった?
以前のコンピュータでは、高度な計算処理を行う部品はCPUだけで、画面表示はVGAチップやグラフィックチップなどと呼ばれる半導体が行っていました。
しかし、これらのチップはそれほど性能が高いものではありませんでした。
しかし、3Dグラフィックスを多用するゲームをはじめとした高度な画像処理を行うには、画像処理に特化した非常に高度な処理装置が必要となりました。
これがCPUに匹敵するような高い性能を持つようになったことから、GPUと呼ばれるようになりました。
GPUの種類や向き不向き
GPUには、大きく分けて2種類あり、性能や用途の向き不向きがあります。
GPUの種類
画像処理を行うGPUは、大きく分けて以下の2種類があります。
単体型GPU
単体型GPUには、「GPUが単体のプロセッサとして構成されており、マザーボード上に搭載されているもの」と、「GPUがグラフィックボードで後付けされているもの」があります。
後述するCPU統合型と比較して性能が高いのが特徴です。
ただし、性能が高い反面「発熱量が多い」「消費電力が多い」といったデメリットがあります。
主なベンダー、製品は、以下の通りです。
NVIDIA: GeForceシリーズ
AMD:Radeonシリーズ
CPU統合型GPU
CPU統合型GPUは、上記の単体型のGPUとは異なり、CPUと統合されたものです。
統合型GPUには、単体のものに比べて性能は低いというデメリットはありますが、「低価格でコストパフォーマンスが良い」「発熱が少ない」「消費電力が少ない」といったメリットがあります。
主なベンダー、製品としては、以下の通りです。
Intel:Irisシリーズ *Coreシリーズ等のCPUに統合
AMD:Radeonシリーズ *RyzenシリーズのCPUに統合
種類ごとの向き不向き
GPUには単体型とCPU統合型があり、それぞれに強みや弱みがあります。
この両者は、どのような目的に向いており、どのように選べばよいのでしょうか。
単体型GPUが向いている用途
単体型GPUは、高い性能を持ちます。
- 3Dグラフィックスなどを多用した画像、映像処理やゲーム
- VRやARなど
- 高度な機械学習などAI(人工知能)の処理
など
このように、単体型GPUは高度な画像や映像処理を得意とし、デザインなどクリエイティブな業務にも力を発揮します。
また、後述するメタバースなどの分野や、AIなどの処理にも大きな役割を果たします。
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CPU統合型GPUが向いている用途
CPU統合型GPUは、性能は高くない代わりに消費電力が少ないことが特徴です。
- 文書作成などの事務作業
- インターネットの閲覧やメールなど
- プログラミングなど
など
CPU統合型GPUは、事務作業やインターネット閲覧等の目的には十分な性能を持ちます。
また、消費電力が低くバッテリーが長時間持つため、外出先でのモバイル利用にも向いています。
クラウドサービスとGPU
企業や研究機関向けに、GPUサーバーと呼ばれる強力なGPUを搭載したサーバーを利用できるようにしたサービスが始まっています。
たとえば、Windows Server専門のホスティングサービスWinserverでも、NVIDIA製GPUを搭載した高火力な専用サーバーを提供しています。
これらは、AIにおけるディープラーニングや自動運転、データサイエンス、気象シミュレーションなどさまざまな分野で使われています。
こうしたGPUサービスは、現在急速に利用が広がるクラウドサービスでも提供が始まっています。
Google Cloud Platform(GCP)は、クラウドサービスの中でもディープラーニングや機械学習などAIに関するサービスが充実しています。
GCPでは、仮想サーバーサービスのGoogle Compute Engineのサービスの中でGPUサーバーを提供しています。
このGPUサーバーには、Googleが提供している機械学習ソフトウェアライブラリであるTensorFlowやPythonの機械学習ライブラリであるPyTorchなどがインストールされた状態となっており、すぐにAI関連の開発を行えるようになっています。
AIやディープラーニングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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新しい分野で注目されるGPU
もともとGPUは、コンピュータの画面表示や画像、映像処理を担う処理装置でした。
しかし、今では高い処理能力を持つことから利用される場面は大きく広がりを見せています。
それがAIやメタバースとして注目される仮想現実などの新しい分野です。
AIとGPU
高度な処理能力を持つGPUは、AIで使われるディープラーニング、自動運転における高度情報処理、データサイエンスなどさまざまな新しい分野での活用が始まっています。
AIの分野では、ビッグデータなどの膨大なデータをディープラーニングの手法を用いてAIに学習させることによって、コンピュータが精緻な予測や正確な判断ができるようになります。
GPUは、AIの学習に必要な高い処理能力を担っています。
従来は、こうした処理もCPUを使うケースがほとんどでしたが、実は高速で並列処理を行うことが得意なGPUの方が向いていることがわかり、現在ではGPUの使用が支流となっています。
たとえば、自動運転の処理にNVIDIA製のGPUとソフトウェアを採用している自動車メーカーは非常に多く存在します。
NVIDIA社は、自動運転プラットフォームとして「DRIVE Hyperion」を提供しています。
このようにGPUベンダーは今やGPUだけでなく、それを効率よくAIなどの演算に利用するためのソフトウェア環境(CUDA)を提供しているケースが増えています。
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メタバースとGPU
GPUの機能が発揮される分野として注目されているのが、「メタバース(仮想空間)」です。
2021年10月28日、facebookがメタバース事業の拡大方針を打ち出すとともに、社名を「meta(メタ)」に変更したのも記憶に新しいところです。
メタバースは、3Dの仮想空間を世界中の多くの人と共有するもので、現実世界と同じようにビジネスやコミュニケーションが取れる世界です。
こうしたメタバースのバーチャル空間の創造に欠かせないのもGPUです。
GPUベンダーのNVIDIAがメタバースプラットフォームとして「NVIDIA Omniverse」を提供しているように、ここでもベンダーの果たしている役割は非常に大きなものとなっています。
このように、GPUベンダーは、今やAIの開発プラットフォームや自動運転のプラットフォームなど、GPU単体だけでなく、それを必要とするサービス全体を包括したソリューションの提供を始めています。
まとめ
「映像作品やゲームのきれいなグラフィックスを作り出す」
「コンピュータの画面を美しく表示する」
GPUはこのような描画や画像、動画処理などに関わる働きをしています。
高度な画像処理が必要になることに伴い、高度な処理性能が要求される昨今において、GPUは、CPUに匹敵するほどの性能を持つ部品となりました。
GPUには、今回紹介したように「単体型」「CPU統合型」の2種類があります。
それぞれの強みや弱みを理解して使い分けることが大切です。
IT業界、デジタル時代の将来を考える上で、GPUは欠かせないものです。
今回、紹介したようにAIや自動運転、ロボット、大規模なシミュレーションなど、多くの新しい分野でGPUの高度な処理が不可欠となっています。
GCPなどの大手のクラウドサービスによるサポートも充実してきています。
また、GPUベンダーは、GPUの将来を見据えて、GPUを含んだトータルシステムの提供を始めています。
AIや自動運転のプラットフォームがその一例です。
こうしたことを考えると、これからのデジタル時代の新しい展開、AIや仮想現実が作り出すイノベーションには、GPUは欠かすことの出来ない存在であると言えます。
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