AI(人工知能)の発展は、これまで3つの段階を経て進んできました。
現段階でキーとなっている技術が、ディープラーニング(深層学習)です。
ディープラーニングは機械学習の一つの手法で、AIを構成するアルゴリズムとして広く用いられています。
今回は、AI の発展に重要な役割を果たしている、ディープラーニングについて解説します。
AIについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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目次
ディープラーニングとAIの歴史
これまで、AIは3つの段階を経て進歩してきました。
- 第一次(1950年代から1960年代)
「AIの起源」と言われる段階で、AIの基礎となるアイデアが生まれ、初期のAIの研究が始まった。
人工知能の定義や目的についての議論が行われ、人間の思考回路を「推論」と「探索」という観点から実現しようと試みた。
- 第二次(1990年代から2000年代)
「統計的機械学習」が台頭し、多くのデータを蓄積したエキスパートシステムの実現を目指した。
また、機械学習やニューラルネットワークのアルゴリズムも登場した。
- 第三次(2010年代から現在)
「ディープラーニング」が台頭。
音声認識、画像認識、自然言語処理などの分野で革新的な成果を出すようになり、強化学習などの新しい手法も登場している。
ビジネスや社会でのAIの活用が広がっている。
ディープラーニングとは
現在のAIにおいて重要な技術であるディープラーニング。
ディープラーニングの概要を、人間の脳が持つ神経回路との類似性も含めて見ていきましょう。
ディープラーニングの概要
ディープラーニングは、2006年にトロント大学のジェフリー・ヒントン教授らが開発した「オートエンコーダ」と呼ばれる技術がもとになっています。
ディープラーニングとは、人間の脳をモデルとしたニューラルネットワークをコンピュータ内で構築しようとするものです。
人間の脳は、複雑な神経回路を組みあわせネットワーク化することで思考や行動を行っています。
ディープラーニングでも、ニューラルネットワークを複雑に組み合わせて、さまざまな事柄を学習し、問題に対して適切な回答を返せるようにしています。
このように、ディープラーニングではコンピュータは学習をもとにして、人間の指示によらず適切な答えを導くことができる仕組みを実現しています。
ディープラーニングで使われるニューラルネットワークとは
人間の脳はさまざまな神経回路が複雑に接続されて情報をやりとりするネットワークを構成しています。
ニューラルネットワークは数理モデルの活用によって人間の脳の構造を実現しようとしたもので、現在までに以下の3つの段階を経て研究が進められてきました。
- 第一次
1957年にローゼンプラットにより提唱された、パーセプトロンによって視覚や脳の機能のモデル化をすることで、コンピュータによるパターン認識を行う仕組み。
1960年代にブームを巻き起こした。
- 第二次
1986年にラメルハートらによって考案された多層パーセプトロンによって1980年代に巻き起こったブーム。
多層パーセプトロンは、発展型パーセプトロンとも言えるもので、「隠れ層」を加えた2層以上のパーセプトロンを組み合わせることで、より精度の高いものを実現しようとした。
- 第三次
2006年に開発されたオートエンコーダをもとにしたディープラーニングによって、2012年ごろからブームとなった。
これまで以上に精度の高い仕組みを実現している。
ディープラーニングの仕組み
3つの段階を経てたどり着いたディープラーニングの研究。
ディープラーニングは、以下の3つの特徴を持っています。
- ニューラルネットワークをベースとした考え方であり、「入力層」「隠れ層」「出力層」の3つの段階に分けた処理を行う。
- 隠れ層が非常に深い階層まで構成されている(ディープラーニングの意)
- 処理の段階での判断や抽出についてもAIが学習によって行う
実際に処理を行う際には、一つの事柄を多くの層に分けて「重みづけ」を行いながら処理を行って正しい答えを出力するという仕組みです。
ディープラーニングと機械学習の違い
ディープラーニングも機械学習の一つの方法ですが、厳密に言えば両者は同じものではありません。
では、両者の違いはどこにあるのでしょうか。
ディープランニング | 機械学習 |
---|---|
判断する際の着目点をAIが自らの学習によって身につける →判断に人の手は不要 | 判断する際の着目点は人間が指定する必要がある →判断に人の手が必要 |
両者の大きな違いは、「人の手が必要か否か」です。
ディープラーニングの活用事例
ディープラーニングは、具体的にどのように用いられているのでしょうか。
- 株式の自動売買システム:ディープラーニングによる株価の予測
- コンピュータシステムの障害予知:挙動から障害を予知し予防保守の実施
- がんなどの深刻な病気の治療法探索:AIによる有用化合物の探索
など
他にもさまざまなところでディープラーニングの考え方を活用したAIによるサービスが提供され始めています。
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ディープラーニングとChatGPT
2022年11月にシリコンバレーのスタートアップであるOpenAIにより公開されたChatGPTは、瞬く間に利用者数を伸ばし、世界中で話題になっています。
すでに2023年の2月の時点で利用者が1億人を超えたと言われています。
ChatGPT, the popular chatbot from OpenAI, is estimated to have reached 100 million monthly active users in January, just two months after launch, making it the fastest-growing consumer application in history, according to a UBS study on Wednesday.
参考:ChatGPT sets record for fastest-growing user base – analyst note
ChatGPTは、自然言語処理技術(NLP)を応用したチャットボットと呼ばれるプログラムで、Webブラウザ上で活用できる形式のものと、APIとしてアプリなどで活用できる2つの形式があります。
従来のチャットボットとの大きな違いは「人間のような自然な対話を実現していること」です。
約5兆語とも言われる膨大なテキストデータを学習し、さらに自己学習を通して自然な会話を生成することができます。
ChatGPTにも、ディープラーニングが使われています。
ディープラーニングを活用した、AIがもたらす未来
ChatGPTの公開など、空前のAIブームが巻き起こっています。
ディープラーニングの技術を活用したAIは、私たちにどのような未来へと導いてくれるのでしょうか。
AIがもたらす未来とは
話題になっているChatGPTをはじめ、Googleから近々リリース予定のBardなど、AIが革新的な進化を見せ始めています。
AIの進歩がもたらす未来の可能性には様々なものがあります。
日常生活に密接に関わる事例を考えてみましょう。
- スマートホームシステム
未来のAIによって、スマートホームシステムがより高度に発展することが期待されています。
AIが活用された自動化システムを導入することで、家庭内の照明やエアコン、電化製品などを自動制御することができます。
また、家庭内のセキュリティや監視システムもAIが活用された高度なシステムが開発されることが期待されています。
- 健康管理サービス
未来のAIは、健康管理サービスの進化にも大きく関わることができます。
例えば、AIを活用した健康管理アプリやウェアラブルデバイスが開発され、健康情報の収集や分析、健康診断の自己診断支援などが実現されると考えられます。
- 買い物支援サービス
未来のAIによって、より高度な買い物支援サービスが実現されることが期待されています。
例えば、AIが活用されたオンラインストアでのショッピング支援や、AIが活用された自動調理家電による料理支援などが実現されると考えられます。
- 交通支援サービス
未来のAIは、交通支援サービスにも活用されることが期待されています。
例えば、AIが活用された交通情報提供サービスや、自動運転車の実現による運転支援サービスなどがあります。
他にも、医療分野における診断支援や創薬における開発支援など、さまざまな分野でAIの活用が期待されます。
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AIと課題
ディープラーニングを活用したAIの進歩が急速に進む中で、人間の知能や能力をAIが超えてしまうシンギュラリティと呼ばれるタイミングが来るとされています。
こうした中で、AIがもたらす課題についても心配されています。
- 雇用がAIに奪われる心配
- AIの自己進化や開発者の倫理観などによる倫理的・社会的な問題
- AIのセキュリティリスク
など
このように、とくに雇用と倫理という点で、AIには課題があることも理解しておきましょう。
まとめ
現在、ChatGPT以外にもさまざまな分野でこうしたAIの活用が行われ、「AI」という言葉を至るところで目にするようになっています。
そして、そのキーとなっている技術がディープラーニング(深層学習)と呼ばれるものです。
従来のAIでは、多くの情報をコンピュータに読ませ、人間がパターンなどを学習させる「機械学習」というアプローチを通して、コンピュータに判断をさせていました。
一方ディープラーニングでは、人間の脳の仕組みを模したニューラルネットワークを、これまで以上に深い階層に分けたものを利用しています。
これまで人間が指示していた判断の際の重みづけや基準などもすべて学習し、コンピュータ自身が判断するということを実現しています。
新しいディープラーニングを用いたAIは、今回紹介したような多くの分野で活用が始まっています。
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