みなさんは、ネットワーク機器に「00:1A:1A:FF:80:00」といった番号が付いているのを見たことはありませんか?
これはMACアドレス(マックアドレス、Media Access Control address)というもので、パソコンやスマートフォンだけでなく、ネットワークに接続されるすべての機器に割当てられた世界で唯一の固有の番号です。
IPアドレスと比べるとなかなか馴染みが薄いMACアドレスですが、ネットワーク通信では大きな役割を果たしています。
今回は、MACアドレスの表記形式や通信の仕組み、IPアドレスとの違いなどについて解説します。
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目次
MACアドレスとは
はじめに、MACアドレスとはどのようなものなのか、基本的な部分から解説します。
MACアドレスの定義
ネットワークに接続されるすべての機器に割り当てられた固有の番号
これがMACアドレスの定義です。
のちほど解説するIPアドレスとも似ていますが、ネットワーク上の住所のようなものの一つです。
郵便や宅急便に例えると「相手先の住所=MACアドレス」と考えると理解できるのではないでしょうか。
郵便や宅急便でも、住所がわからないと送り先の相手には届きませんよね。
同じように、MACアドレスがあることによって、通信の際に相手の機器がどこにいるのかわかるようになっています。
MACアドレスの役割とは
よくネットワークの基礎として学習されるものに「OSI参照モデル」と呼ばれるものがあります。
これは、ネットワーク通信に関連する機器やプロトコルなどを7階層に整理したもので、以下のような階層構造を持ちます。
階層 | モデル名称 | プロトコル |
---|---|---|
7 | アプリケーション層 | アプリケーションプロトコル(HTTPなど) |
6 | プレゼンテーション層 | |
5 | セッション層 | |
4 | トランスポート層 | TCP、UDPなど |
3 | ネットワーク層 | IP、ICMP、ARPなど |
2 | データリンク層 | イーサネット、MACアドレスなど |
1 | 物理層 |
MACアドレスは、この7階層のうちデータリンク層に位置しており、隣接した機器同士で通信する仕組みに関連しています。
ちなみに、OSI参照モデルでは、データリンク層は以下のような役割を果たしています。
階層2:データリンク層
データリンク層は、物理層で直接接続された機器間での通信を可能とします。
通信で0,1の数字で規定されたデータの内容を意味のある固まり(ブロック)にして相手に伝えます。
つまり、物理層で実際にケーブルをつなげて、データリンク層でつないだ機器同士の通信を担うという通信における根幹部分の役割を果たしていると言えます。
OSI参照モデルについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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MACアドレスの形式
一般的にネットワークアドレスとしてよく知られているIPアドレスとMACアドレスは、全く違う形式で表現されます。
MACアドレスは、どのような形式なのでしょうか。
IPアドレスの表示形式と比較しながら確認しましょう。
IPアドレスの形式
IPアドレスは、ネットワーク上で通信相手を識別するための番号です。
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「203.137.1.214」のような32bitの数字の列から構成されています。
さらに、以下のようなクラス別に分けられており、一般的にはクラスCが用いられています。
クラス | 値 | 備考 |
---|---|---|
クラスA | 0.0.0.0 〜 127.255.255.255 | |
クラスB | 128.0.0.0 〜 191.255.255.255 | |
クラスC | 192.0.0.0 〜 223.255.255.255 | |
クラスD | 224.0.0.0 〜 239.255.255.255 | 一般には使われない |
クラスE | 240.0.0.0 〜 255.255.255.255 | 使われない |
MACアドレスの形式
MACアドレスは、以下のような0〜9、A〜Fの16進数で表され、12桁で構成されています。
前半の6桁を「ベンダー識別子」と言い、ネットワーク機器のベンダー(製造会社)ごとの固有の番号が割り当てられています。
後半の6桁は、「ベンダー内管理番号」と言い、ベンダーが管理している番号が機器ごとに一意に割り当てられます。
その結果、MACアドレスは世界で一つの固有の番号となっています。
MACアドレスによる通信とは?
先ほど、MACアドレスは「OSI参照モデル」における「データリンク層」に分類されると説明しました。
MACアドレスを使った通信は、どのような仕組みであるのかを見ていきましょう。
MACアドレスは、隣の機器(次の通信相手)への通信にのみ使われます。
たとえば、A地点からB地点を経由し、C地点にと届く場合、以下のように行います。
①A→Bへの通信時:BのMACアドレスを付けておく
②Bは自分宛てと認識する
③BでCのMACアドレスに宛先を変更
④B→Cへの通信時:CのMACアドレスを付けておく
⑤Cが自分宛てと認識し、通信が到達する
このように、経由する経路の中で順々に宛先のMACアドレスを書き換えていきます。
MACアドレスとIPアドレスの比較
さて、一般的にネットワークで使われるアドレスといえば、IPアドレスです。
このIPアドレスとMACアドレスとは、どのような違いがあるのでしょうか。
そして両者にはどのような強みや弱みがあるのでしょうか。
IPアドレスとは
まず違いを説明する前に、IPアドレスについて確認しましょう。
「ネットワークで使われる住所のようなものである」という点は、MACアドレスと同じです。
IPアドレスは、「203.137.1.214」のような32bitの数字の羅列であるといった特徴があります。
両者の違いについては後ほど改めて解説します。
MACアドレスとIPアドレスは何が違う?
MACアドレスとIPアドレスは、何が違うのでしょうか?
MACアドレス
隣接する機器同士の通信を可能にする:「次にどこに届けるか(次の通信先)」
IPアドレス
ネットワーク上の目的の機器まで通信を届ける:「最終的にどこに届けるか(目的地)」
MACアドレスとIPアドレスの違い
上記のように、MACアドレスとIPアドレスでは、「次の通信先」と「最終目的地」という通信における役割に大きな違いがあります。
さらに、MACアドレスには「隣接した機器同士」の通信といった特徴があるため、別のネットワークセグメントにある機器同士の通信はできません。
逆に、同一のネットワークセグメント内であれば、IPアドレスがなくてもMACアドレスだけで通信可能です。
また、その他の特徴として、次のようなものがあります。
- 種類:IPアドレスにはプライベートアドレスとグローバルアドレスの2種類がある。
- 数:MACアドレスは70兆個以上の膨大な数がある。IPアドレスは枯渇問題が起きている。
枯渇問題とは、多くの機器がネットワークに接続されることにより、機器に割り当てることの出来るアドレス数が足りなくなってきているというものです。
MACアドレスは70兆個以上あるため、当面の間は枯渇問題は発生しないでしょう。
43億個しか存在しないIPアドレス(IPv4)では枯渇問題が発生しており、IPv6という128bitに拡張したIPアドレスの使用が進められています。
これらを整理すると以下のようになります。
MACアドレス | IPアドレス | |
---|---|---|
通信ターゲット | 隣接した機器 | 最終目的地 |
別セグメントとの通信 | 不可 | 可能(IPアドレスとMACアドレスの両方が必要) |
同一セグメントでの通信 | 可能 | 可能(IPアドレスとMACアドレスの両方が必要) |
種類 | なし | 2種類(プライベートアドレス、グローバルアドレス) |
数 | 70兆個以上 | 43億個 |
枯渇問題 | なし | あり(解決方法はIPv6の使用) |
表に記載したように、通信の場合はIPアドレスだけでなくMACアドレスも必要となります。
普段利用する際に意識することはないですが、ネットワークの知識として覚えておきましょう。
MACアドレスの確認方法
パソコンやスマートフォンなど、ネットワークに接続されているすべての機器には、MACアドレスが付けられています。
では、それぞれの機器のMACアドレスを確認するためには、どうすればいいのでしょうか。
MACアドレスを確認する方法(パソコン編)
パソコンの場合は、以下のような方法で確認することができます。
Windows
①「スタート」メニューから「設定」を開く
②「ネットワークとインターネット」をクリック
③確認したいネットワークをクリック
④「物理アドレス」に書かれているのがMACアドレスです
Mac
①アップルメニューから「システム環境設定」を開く
②調べたいネットワークを選んで、「詳細」をクリックする
③「ハードウェア」を開くと、MACアドレスが表示されています
MACアドレスを確認する方法(スマートフォン編)
スマートフォンの場合は、以下のような方法で確認することができます。
iOS
①「設定」アイコンをタップして開く
②「設定」メニューから「一般」を開く
③「情報」を開く
④「Wi-Fiアドレス」がMACアドレスです
Android
①「設定」アイコンを開く
②「端末情報」をタップして開く
③「端末の状態」をタップして開く
MACアドレスはセキュリティ設定にも使われる
MACアドレスは、ネットワークに接続されるすべての機器に割り当てられた世界で唯一の固有の番号です。
これは逆に考えると、MACアドレスを知れば機器が特定できるということになります。
したがってネットワーク機器に接続可能なMACアドレス、接続不可のMACアドレスを設定することで、接続を厳密にすることが一般的に行われています。
まとめ
MACアドレスは、すべてのネットワーク機器に割り当てられている12桁の16進数の番号で、それぞれの機器に固有の番号です。
IPアドレスと同じように、ネットワーク上の住所として利用されています。
MACアドレスもIPアドレスも、目的地に通信で正しくデータを届けるための大切な情報ですが、両者には以下のような違いがあります。
<MACアドレス>
- 「次にどこに届けるか」:次の相手に届けることが目的
<IPアドレス>
- 「最終的にどこに届けるか(目的地)」:最終の目的地に届けることが目的
実際のネットワーク上の通信では、いずれの情報も使いながら適切に情報が伝わり、届けられます。
みなさんが、ネットワークで通信をするとき、インターネットでさまざまなサイトを閲覧するときには、こういった仕組みが使われているのです。
ネットワークの基礎知識については、これらの記事もご覧ください。
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