PCやスマートフォンなどで「Webサイトを閲覧する」、「動画を観る」といったことは、すでに私たちの日常になっていますよね。
こうしたWebサイトを提供するのに欠かせないものが、Webサーバーソフトウェアです。
今回紹介するApacheは、このWebサーバーソフトウェアの中でもっとも古くから利用されているものの一つです。
Apacheは、誕生から現在までどのような歴史をたどり、どのような特徴を持っているのでしょうか。
そして、クラウドやAIなど新技術が次々と誕生し、新しい思想に基づいたWebサーバーソフトウェアが次々と開発される中、Apacheに将来性はあるのでしょうか?
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目次
ApacheなどのWebサーバーソフトとは
まずApacheも含まれるWebサーバーソフトウェアとはどのようなものか、おさらいも込めて見ていきましょう。
インターネット上には、現在約19億ものWebサイトがあると言われています。
こうしたWebサイト、いわゆるホームページを運用するために必要なソフトウェアがWebサーバーソフトウェアです。
Apacheは世界的に高いシェアを持つ
Apache(読み方:アパッチ)は、Webサーバーソフトウェアの代表格の一つであり、世界的にも高いシェアを持っています。
どのような特徴や歴史を持っているのでしょうか。
Apacheとは
Apacheは、無償で利用できるオープンソースのWebサーバーソフトウェアです。
汎用性が高く、WindowsやLinuxなどの様々なOSで動作させることができます。
また、高い安定性と信頼性、動作の軽さから人気を集めており、個人から企業などのエンタープライズ市場まで幅広く利用されています。
オーストリアのWeb市場調査会社Q-Successが行ったWebサーバーの世界シェアに関する調査の「W3Techs – World Wide Web Technology Surveys」によると、Apacheのシェアは2022年4月時点で31.4%でした。
トップのNginxに次ぐ高いシェアを誇っています。
Nginxについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
Apacheの歴史
Webサーバーソフトウェア自体は、Apacheがリリースされる前から開発されてきました。
ここでは、Apacheの歴史について見ていきましょう。
まず、1990年にスイスのCERN(欧州原子核研究機構)によって、CERN httpdが世界初のWebサーバーソフトウェアとして開発されました。
次に、NCSAによってNCSA httpdが開発されました。
これらが最初期のWebサーバーソフトウェアです。
これらは、研究機関や一部の人達によって利用されるといったレベルに留まっていました。
Apacheは、これらのソフトウェアを有志が集まって改良したのが始まりです。
Apacheの初版は、1995年にリリースされました。
そしてすぐにNCSA httpdのシェアを追い抜いて急激にシェアを高めていきました。
なお、現在のApacheはすでに大幅な改良が入っているため、当初のNCSA httpdのコードはすでに残っていません。
それ以降の開発は米国のApacheソフトウェア財団と呼ばれる非営利団体によって行われ、この団体がApache関連のさまざまなプロジェクトを統括しています。
Apacheの強み
Apacheにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
また、どういった用途に向いているのでしょうか。
Apacheの持つメリットやデメリット
WebサーバーソフトとしてApacheを使うことは、以下のようなメリットやデメリットがあります。
Apacheのメリット
Apacheの強みには以下のようなものがあります。
- 無償で利用できるため、コストが安くできる
- 情報が多い
- 多数のモジュールが利用できる
- 長い実績に基づく信頼性があり、安定性が高い
- 重い処理でもスムーズに行える
など
Apacheのデメリット
逆にApacheは、以下のような点を不得意としています。
- 無料で使用できる反面、公式のサポートや相談窓口は用意されていない
- 同時処理数が多くなるとメモリ消費が高くなる
など
Apacheが強みを発揮する分野とは
Apacheはどのような分野で強みを発揮するのでしょうか?
動画配信サービスやオンラインショップなど、動的コンテンツの重い処理が行われる場合は、重い処理に向くApacheが適しているでしょう。
ただし、軽い処理でも、同時接続数が多くなると処理が重くなることがあるため注意が必要です。
Apache、Nginx、IISの違いとは
Apacheと同じように高いシェアを持つWebサービスソフトにNginx(読み方:エンジンエックス)やIIS(Microsoft Internet Information Services)があります。
これらのWebサーバーソフトウェアにはどのような違いがあり、使い分けはどうすればよいのでしょうか。
Nginxの特徴
NginxもApacheと同じくオープンソースのWebサーバーソフトです。
大きな特徴として、高い処理能力や並行処理能力を持ち、メモリ消費が少ないことが挙げられます。
それもそのはず、NginxはApacheの弱点である「大量の同時接続時にメモリを大量に使用し、サーバーがパンクする」という点を克服することを設計上の思想として開発がすすめられました。
Nginxについてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
IISの特徴
IISは、Microsoft社が提供するWebサーバーソフトです。
Microsoft製品(Windows OS、SQL Server等)との高い親和性や、操作が視覚的にわかりやすいという特徴もあります。
また、信頼性が非常に高く、Microsoftの充実したサポートも受けられます。
IISについてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
Apache、Nginx、IISを比較すると
ここまでの3つのWebサービスソフトウェアの違いをまとめると以下のようになります。
IIS | Apache | Nginx | |
---|---|---|---|
市場シェア (2022年4月 Q-Successによる) | 6.0% | 31.4% | 33.2% |
特徴 | ・ASP(.NET Framework)を使った動的サイトが得意 ・Microsoft製品との親和性 ・視覚的な操作性の高さ | ・HPやCGIを使った動的サイトが得意 ・高速 ・軽量 ・高機能 ・ただし、同時処理数が多いと対応出来ない | ・静的サイトが得意 ・高速 ・軽量 ・高機能 |
サポート体制 | 非常に充実したサポート体制を持つ | サーバーベンダー等でサポート提供がある | NGINX社によるサポートもある |
対応OS | Windows | 基本的にLinuxだが、Windowsも可能 | 基本的にLinuxだが、Windowsも可能 |
処理ベース | プロセス | プロセス、スレッド | イベント |
アーキテクチャ | レガシー | レガシー | 分散型 |
向いているサーバー規模 | 中規模まで | 中規模まで | 大規模も可能 |
スケールアウト等 | 可能 | 困難 | 容易 |
その他の特徴 | モジュールを使った機能拡張の容易さ | ロードバランサー、リバースプロキシの機能を持つ |
Apache、Nginx、IISはどう使い分ける?
Apacheがオンラインショップのように重い処理を必要とするサイトに適しているのに対して、Nginxは下記のような用途に向いています。
- 一般向けのWebサービスなど多数の同時アクセスが発生する業務
- 静的コンテンツが多いWebサービス等
また、IISは下記のような利用に適しています。
- 大規模なWebサイト
- Microsoftが提供するAzureを使用し、IIS のWebサーバーサービスを提供する場合
Webサーバーソフトウェアは、種類によって向き不向きがあります。
使用用途によってうまく使い分けることをおすすめします。
Apacheの将来性とは
IT業界では、クラウドへの移行やAI、ビッグデータの利活用など急速な変化が進んでいます。
こうした中、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)など多くのクラウドサービスでApacheが利用できるようになっています。
また、Apache HadoopやApache Sparkなどビッグデータの利用にも力を発揮する製品があります。
Apache Sparkは、分散型のスケールアウトデータ処理では業界標準となっていますが、機械学習など先進的なAPIを備え、物理サーバーやクラウド問わず利用できるようになっています。
さらには、GPUのトップベンダーであるNVIDIAの製品と組み合わせたAIプラットフォームも非常に競争力の高く、将来性が感じられるものとなっています。
このように、Apacheは従来のWebサーバーソフトウェアの範疇を超えて成長しています。
AIや機械学習、ビッグデータなど、現在注目されている分野でもApacheは大きな役割を果たしつつあるのです。
まとめ
WebサーバーソフトウェアであるApacheは、1995年の初版リリース以来、Webサイトのサービス提供など大きな役割を果たしてきました。
現在でもNginxに世界シェアでは抜かれたものの、高いシェアをもって個人からエンタープライズ市場まで幅広く利用されています。
Apacheは、長い実績と信頼性、安定性が魅力ですが、とくに「重い処理を効率よくこなせること」、「手軽に構築が可能で、目的に合わせた機能の拡張が簡単にできる」といった強みを持っています。
その反面、「多数の同時接続は処理しきれず、メモリ消費が上がってしまう」といったデメリットがあります。
したがって、今回解説したようにNginxなど、他のWebサーバーソフトウェアと比較し、目的に合わせて使い分けることが重要です。
クラウドへの対応も進み、AIやビッグデータなどの分野にもApache Sparkなどを通して大きなイニシアチブを取ろうとしているApache。
これからも目が離せません。