差分バックアップと増分バックアップの違い、使い分けを解説

バックアップは、サーバー運用を行う中でとても大切なポイントです。

「ファイルを消してしまった…」「ファイルを上書きしてしまった…」「システム障害の際に、バックアップから復旧させたい…」など、バックアップが取得されていることで、助かる場面は非常に多くあります。

地震などの災害時に情報システムを維持するBCP(事業継続計画)の考え方の中でも、バックアップは大きなウエイトを占めています。

バックアップを行う際に欠かせないのが「差分バックアップ」と「増分バックアップ」の使い分けです。

これらはどのように違い、どのように使い分けるべきなのでしょうか。

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バックアップの重要性

なぜ、コンピューターのデータをバックアップしなければならないのでしょうか。

バックアップは、データが壊れたときに復旧させるために必要なものです。

コンピューター上のデータは、以下のようなさまざまな理由から壊れてしまうことがあります。

  • ハードディスクなど機器の故障
  • OSやアプリケーションなどソフトウェアの障害
  • マルウェア感染
  • 不正アクセスなどのサイバー攻撃
  • 操作ミス
  • 地震などの災害によるもの

など

組織が保存しているデータは、「個人情報」「顧客情報」「技術情報」「人事情報」や「経理情報」など、重要な情報ばかりです。

こうした情報がひとたび失われてしまうと、ビジネスに与える影響は計り知れません。

こういった事態を避けるためには、データをあらかじめ「バックアップ」しておくことが重要です。

バックアップの種類

ひとくくりにバックアップと言っても、いくつかの種類があります。

まず、対象として何をバックアップするかという観点で分けると、以下のようになります。

システムバックアップ

システムバックアップは、サーバーのOSなどシステムのバックアップを行い、サーバーが動作しなくなったときに復旧させるために使われます。

データベースバックアップ

データベースバックアップとは、製品データベース、機器のデータベースなど、データベースとして保管されているものをバックアップすることです。

データバックアップ

データバックアップは、業務データや顧客データなど、データファイルをバックアップします。

データバックアップの取得方法には、以下の3つがあります。

  • フルバックアップ(Full Backup)
  • 差分バックアップ(Differential Backup)
  • 増分バックアップ(Incremental Backup)

これは、バックアップ対象が何かという区分でなく、バックアップの取得方法による分け方です。

次に、この分け方の違いについて解説します。

差分バックアップと増分バックアップ

バックアップの取得方法で、よく間違えるのが「フルバックアップ」「差分バックアップ」「増分バックアップ」です。

これらはどのような違いがあるのでしょうか。

フルバックアップとは

フルバックアップとは、その名の通りデータの期間などに関係なく「すべてのデータをバックアップすること」です。

すべてのデータをバックアップするので、必要なデータはすべて保管できるというメリットがあります。

一方で、「時間がかかる」「バックアップサイズが大きい」といったデメリットがあります。

それゆえに多くの場合、週に1度の夜間バックアップなど、毎日でなくポイントでのバックアップとして行われます。

また、次に解説する差分バックアップ増分バックアップと組み合わせて使います。

差分バックアップと増分バックアップ

差分バックアップ増分バックアップは、いずれも、「フルバックアップ」以降に追加や更新されたデータをバックアップする手法です。

差分バックアップとは

差分バックアップは、最新のフルバックアップ取得以降のすべての変更を、毎回バックアップする手法です。

  • 3月31日にフルバックアップした場合、4月1日は4月1日の変更分、4月2日は4月1日と2日の変更分を取得するため、データがどんどん増えていく。

→データ増加に伴ってバックアップ時間が長くなっていく。

  • 完全リストアをする場合はフルバックアップと最新の差分だけで良いので迅速に行える

※リストアとは、バックアップしたデータを戻すこと

増分バックアップとは

増分バックアップは、最新の増分バックアップからの変更をバックアップする手法です。

  • 3月31日にフルバックアップした場合、4月1日は4月1日の変更分、4月2日は4月1日取得以降の4月2日の変更分のみ取得するため、データは増えない。

→バックアップ時間もそれほど変わらない。

  • 完全リストアしようとする場合、フルバックアップ以降のすべての増分バックアップを順々にリストアしていく必要があるため、時間と手間がかかる。

このように、差分バックアップ増分バックアップは、それぞれにメリットやデメリットがあります。

バックアップの目的に合わせて選びましょう。

差分バックアップと増分バックアップの比較

差分バックアップ増分バックアップについて、解説した内容を以下にまとめました。

なお、参考までにフルバックアップも併せて記載しています。

 差分バックアップ増分バックアップフルバックアップ
バックアップ対象追加や変更分のみ追加や変更分のみすべてのデータ
バックアップ開始点最新のフルバックアップ以降最新の増分バックアップ以降-
バックアップデータ量増えていく増えていかない-
バックアップ時間増えていく増えていかない-
リストアフルバックアップ

最新の差分バックアップ
フルバックアップ

すべての増分バックアップ
フルバックアップ
リストアの手間比較的かからない手間がかかる容易

差分バックアップと増分バックアップの使い分け

バックアッププランを作成する場合について考えてみましょう。

フルバックアップと併せて、次のような差分バックアップ増分バックアップの使い分けも重要です。

  • どのタイミングで差分バックアップを行うのか
  • どのタイミングで増分バックアップを行うのか

詳しくは次の章で「バックアップ計画の立て方」として解説しますが、差分バックアップ増分バックアップは概ね以下の方針で使い分けます。

差分バックアップが適切な場合

  • 日々の更新や追加のデータがそれほど多くない
  • バックアップ時間が増えても問題ない
  • リストアが行われる機会が多い

増分バックアップが適切な場合

  • 日々の更新や追加のデータが多い
  • バックアップ時間が増えると夜間バッチ等に影響が出てしまう
  • リストアが行われる機会は少ない

それぞれのバックアップはこうした特徴があるので、目的と状況に合わせて使い分けましょう。

バックアップ計画を立てよう

「フルバックアップ」「差分バックアップ」「増分バックアップ」の3つのバックアップ手法について見てきました。

これらの方法を使って、効率よく必要なデータのバックアップを取得するためには、しっかりとした計画「バックアッププラン」を立てることが重要です。

バックアップ計画のポイント

バックアッププランを立てると言っても、現実の複雑なシステムでは、物理サーバー(オンプレミス)もあればクラウドもあり、さらには両者を組み合わせたものもあります。

ここでは、シンプルな単一のシステムで考えてみましょう。

まず、バックアッププランを建てる上で、最も大切なことは以下の3つのポイントです。

  1. 必ず全体像を図に描く
  2. バックアップ対象と保存期間、戻しが発生する頻度を明確にする
  3. 何にバックアップするか(ストレージ、クラウドなど)を明確にする

バックアップ計画の立て方

ポイントを抑えた上で、実際にバックアップ計画を立ててみましょう。

最初に行うことは、以下のような要件の整理です。

要件の整理

  • バックアップ対象:  サーバー全体or 特定のデータ
  • バックアップ頻度:  週に一度、毎日、など
  • バックアップ方法:  市販ソフト or バッチなど
  • 保存期間:  一週間、一ヶ月、など
  • バックアップ先:  ストレージ、など

その上で、以下を検討します。

  • 実際のバックアップスケジュールの作成
  • フルバックアップ、差分・増分バックアップの組み合わせ

これを決めた後に、対象システムに実装します。

バックアップ計画を立てるときの注意点

バックアップは、システム運用の重要な要素の一つです。

バックアップを正しく行うためには、いくつか押さえるべき注意点があります。

  • バックアップ先の容量を考えて計画を立てる
  • 他のタスクやジョブ等と処理が重ならないようにする

バックアップ先の容量はもちろんですが、バックアップはシステムやネットワークに大きな負荷を与える場合や、サービス停止の必要がある場合もあります。

そのため、他のタスク等と実行時間がかぶらないように注意しましょう。

クラウド時代のバックアップも増分、差分を考えよう

かつてのオンプレミスの全盛期には、物理サーバーのデータをLTOなどのテープ装置や外部ストレージなどに保管し、必要に応じてリストアするという流れが一般的でした。

しかし、クラウド時代の今やバックアップの方法は大きく変わっています。

「クラウド上のデータをストレージサービスに保管」「クラウドストレージからインスタンスにリストア」など、バックアップがクラウド上で完結する場合がほとんどです。

そんな中でも、「フルバックアップ」「増分バックアップ」「差分バックアップ」の考え方は何も変わりません。

この考え方を踏まえて、先程解説したバックアッププランを立てることが大切です。

まとめ

「バックアップ」は、サーバーを運用する際の重要な要素の一つです。

「大事なファイルを間違って削除してしまったので戻したい」のような理由から、「不正アクセスで消されてしまったデータを戻したい」といったサイバー攻撃からの復旧、災害による機器の破損に伴うデータの破損からの回復など、その用途は多岐に渡っています。

バックアップの手法で複雑なところは「フルバックアップ」「差分バックアップ」「増分バックアップ」の区別が非常にわかりにくいという点です。

  • フルバックアップ: 全体の完全バックアップ
  • 差分バックアップ: フルバックアップ以降の変更を毎回すべてバックアップする
  • 増分バックアップ: 最新の増分バックアップ以降の変更をバックアップする

実際のシステムのバックアップを行う際には、今回解説したようにこれら3つの手法を要件にあわせて組み合わせたバックアップ計画を作ることが重要です。

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