一般的なパソコンの数十万倍など非常に高速な計算処理が行えるコンピューター、それがスーパーコンピューター(supercomputer)です。
普段利用するパーソナルコンピューター(personal computer)を「パソコン」と略しますが、スーパーコンピューターは「スパコン」と略して呼ばれることが多いです。
2020年6月の日本経済新聞に「国産スパコン世界一奪還」という記事が掲載されました。
このように、スーパーコンピューターの分野では日本は世界でもトップクラスの技術を持っています。
人間や普通のパソコンで処理できない計算、時間がかかりすぎる計算を高速に処理できるスーパーコンピューター。
今回は、こうしたスーパーコンピューターについて、その概要や特徴、利用される分野などについて解説します。
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目次
スーパーコンピューターとは
まず、スーパーコンピューターとはどういうものなのでしょうか。
改めてここで解説しておきます。
スーパーコンピュータってどういうもの
スーパーコンピューターは、スパコンと略されて一般的なコンピューターと比べて非常に高い性能を持っています。
こうしたスーパーコンピューターは、後ほど詳しく説明しますが、高度な科学技術計算やコンピューターシミュレーションなどの分野で活用されています。
たとえば、2020年に日本のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、コロナウイルスの飛沫感染リスクをシミュレーションしたことが話題となりましたね。
それ以外にも、少子高齢化や気候変動と言った社会問題の現状分析と解決策の検討のために、スーパーコンピューターによるシミュレーションが活用されています。
そして、日本はこうしたスーパーコンピューターの分野では高い実績を持っています。
2012年以来、世界一のスーパーコンピューターとして世の中を牽引してきたのは「京(けい)」というスーパーコンピューターでした。
「京」の後継として開発された「富岳」は、使いやすいスーパーコンピューターを目指して設計され、世界一の称号を手にしました。
なぜ速いの?スーパーコンピューターのしくみ
非常に高い性能を持ち、高度な計算を行うことのできるスーパーコンピューター。
なぜ、そんなに高い性能を持っているのでしょうか。
ここでは、高性能を実現しているスーパーコンピューターの仕組みについて解説します。
スーパーコンピューターが高い性能を発揮するためのポイントは、以下の2つです。
- CPUの高速化(動作周波数の向上)、コア数の増加
- たくさんのコンピューターを接続して高速化する
普段よく使用するパソコンの多くは、CPUが1つしか搭載されていません。
それに対し、スーパーコンピューターでは数千から数万個のCPUを使用し、CPUを同時に効率的に動かして計算処理を行います。
「京」では8万個以上、「富岳」では15万個以上のCPUが使われています。
また、それらのCPUを使用した数百個のコンピューターを接続することで膨大な計算処理を短時間で行うためのシステムが構成されています。
このように、多くのCPUを使ったり、コンピューター自体もたくさんの台数を接続したりすることで高速化を実現しています。
スーパーコンピュータが注目される背景とは
なぜ、スーパーコンピューターは注目されるようになってきたのでしょうか?
それには、以下のような背景があります。
- IoTの進歩などで扱われるデータが急拡大していること
- AIの進歩によるもの
- シミュレーションなど、コンピュータ上での試験の増加
- ものづくりの現場などでの利用ニーズの増加
など
このようにIT技術の進展とともに、スーパーコンピューターなど高性能なコンピューターを活用するニーズが拡大しているということが注目される背景ともなっています。
AIについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

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日本が誇るスーパーコンピューター
世界一のスーパーコンピューターといえば、日本の「富岳」です。
神戸ポートアイランドの理化学研究所に設置されている「富岳」は、2020年の「International Supercomputing Conference (ISC 2020)」で発表されたスーパーコンピューターの世界ランキングにおいて世界1位を獲得しています。
2020年より試行運用を開始し、2021年3月に本格稼働、2021年3月9日から供用開始となっており、ランキング1位を獲得した当時は80%程度の性能しか発揮されていなかったと言われています。
「富岳」とは富士山の異名であり、世界トップレベルのスーパーコンピューターとして世界中の人々に親しみやすい名称であるとして公募から選ばれました。
富士山の高さが性能の高さを、富士山の裾野の広がりがユーザーの広がりを意味します。
実際、富岳の研究で培われたテクノロジーは、世界中の様々な場面で活用が進んでいます。
実は2011年にもスーパーコンピューターの世界ランキング1位を獲得しており、それが「富岳」の前身にあたる「京」です。
2005年より開始した次世代スーパーコンピュータプロジェクトにおいて、理化学研究所と富士通が共同開発しています。
「京」という名称は、万進法の単位で、計算科学の新たな門となることを期待して名付けられました。
後継者「富岳」の設置のため、2019年8月に「京」は全電源を停止し、システムがシャットダウンされました。
「京」に搭載されたCPUは、開発者の理化学研究所へ寄付した人への返礼品として譲渡され、大きな話題となりました。
スーパーコンピューターの活用分野とは
普通の家庭で使われるパソコンや企業で利用されるサーバーと比較して非常に高性能なスーパーコンピューター。
スーパーコンピューターはどういったところで使われるのでしょうか。
スーパーコンピューターは従来から以下のような分野で活用されてきました。
- 気候の変動予測。例えばゲリラ豪雨、世界的な気候の長期予測(エルニーニョなど)など
- シミュレーションによる地震や水害などの災害に対するリスクの把握
- バイオインフォマティクスなど生物学における高度な計算による新しい医学的知見の発見など
- AIやシミュレーションによる交通渋滞の予測と回避
- 産業分野での新素材の開発
- 核実験のシミュレーションによる実施
など
このように、非常に高い性能を持つスーパーコンピューターは、現在さまざまな分野で活用が進められています。
実物を用いることや再現することが難しい場合、また莫大なコストや時間を要する実験については、スーパーコンピューターがシミュレーションを行うことで結果を得ることができます。
そして、現在新型コロナウイルスの感染の蔓延が続く中で、コロナウイルスに対するワクチンとなりうる有用物質の探索などにも力を発揮しています。
スーパーコンピューターが処理するビッグデータについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

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まとめ
非常に高い性能を持つ計算機であるスーパーコンピューターは、科学技術計算や世界的な気候変動のシミュレーション、産業分野での新素材の開発研究など、とても多くの分野で利用が広がっています。
また、現在感染の蔓延が続いている新型コロナウイルスに対する対応としても、スーパーコンピューターはワクチンや特効薬の開発につながるような有用物質の探索や分子設計などでも大きな役割を果たしています。
こうした高い性能を持つスーパーコンピューターは、多くの高速なCPUを使うことや、多数のコンピューターを接続して処理させることで高い性能を発揮しています。
こうしたコンピューターの使い方もIT技術が進歩することで可能となったものです。
日本は、世界一を記録した「富岳」や「京」などスーパーコンピューターでは一流の技術を持っています。
今後、切り開かれていくデジタル時代でもこうしたスーパーコンピューターの利用はさらに広がっていくことでしょう。
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