この記事の信頼性:本記事は、Windows Serverを20年以上提供している「Winserver」のマーケティングチームおよび技術チームが執筆しています。実際に企業ユーザーから寄せられた設定相談やサポート事例に基づき、初心者にもわかりやすく解説しています。最終更新日:2025年10月29日

近年、企業が扱うデータは社内システム・クラウド・外部サービスなどに分散し、「必要な情報がどこにあるのか分からない」「分析に時間がかかる」といった課題が増えています。こうした状況を解決する新しいデータ基盤の考え方として注目されているのが 「データファブリック」 です。
データファブリックとは、社内外に点在するデータをつなぎ、統合的に管理・活用できるようにする仕組みのことでクラウドやオンプレミスを問わず、あらゆるデータを“ひとつの布(ファブリック)”のように扱えることから、この名がつけられています。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進やデータ統合に課題を感じている」「自社に適した仕組みを検討したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
対象読者:クラウドやデータ活用の必要性を感じているが、“データファブリック”という言葉や考え方をまだ整理できていない企業の情報システム担当者、IT担当者、DX推進担当者
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目次
データファブリックとは?
概要
データファブリックとは、企業内外に散らばったデータを”1枚の布”のように編み合わせ、ひとつの仕組みとして効率的に扱えるようにするデータ基盤です。構造や仕組みについては、第3章で詳しく解説します。
クラウドサービスや部門ごとに異なるシステムが増えると、データが分散し「必要な情報が見つからない」「同じデータが複数の場所に存在する」といった課題が生じます。データファブリックを活用することで、組織全体のデータ利用状況をまとめて可視化でき、「誰が」「どのデータを」「どのように使っているか」を追跡できるようになります。
目的と役割
データファブリックの目的は、単にデータをまとめることではなく、以下のような企業が抱える課題を解決することを狙いとしています。
- 部門ごとにデータ形式や保存場所が異なる
- データの正確性・信頼性を担保できない
- データ分析やAI活用が思うように進まない
これらを解決するために、データファブリックは「データを結ぶインフラ」として機能します。つまり、どこに保存されているデータでも、安全かつ統一的にアクセス・分析ができる環境を整え、業務全体の「共通基盤」としての役割を担います。
データファブリックが注目される背景
調査会社Fortune Business Insightsの予測によると、世界のデータファブリックの市場規模は2032年までに1291億米ドルに達し、予測期間中は年平均成長率(CAGR)21.2%と予想されています。
この急成長の背景には、次のような変化があります。
- マルチクラウド/ハイブリッド環境の普及
- SaaSツール利用の増加によるデータ分散
- DXによるデータ活用要求の高まり
- AIや分析用途に向けたリアルタイムデータの需要増加
つまり、現代の企業では「データをいかに早く・正確に扱うか」が競争力を左右する重要な要素になっています。
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データファブリックの市場拡大の理由
データファブリックが注目される理由は、単なるトレンドではなく、企業が直面している”データ活用の構造的な課題”を根本的に解決できる可能性があるためです。
| 市場拡大の要因 | 企業が抱える課題 | データファブリックによる解決策 |
| データの分散 | 各部門やクラウドにデータが点在している | 仮想的にデータをつなぐことで、まとめて扱える |
| データ形式や仕組みが多様化 | CSV・APIなど形式がバラバラ | メタデータを活用し、共通形式でアクセス可能 |
| リアルタイム性の不足 | ETL(データ抽出・変換・ロード)処理で遅延が発生 | 動的にデータを参照し、即座に反映可能 |
| ガバナンス不足 | 権限・セキュリティ管理が不統一 | 共通ルールで設定や監査が可能 |
※ガバナンス…組織を運営するための管理体制
このように、データファブリックはデータ統合・ガバナンス・分析のすべてをつなぐ基盤として、DXを支える土台技術に位置づけられています。
データファブリックの仕組みとアーキテクチャ
データファブリックは、「分散したデータを一つの仕組み」として扱うための論理的な統合基盤です。従来のようにデータを一ヶ所に集約するのではなく、異なる環境のデータを仮想的に結びつけ、共通のルールで利用できるようにします。
三層構造の概要
データファブリックの構造は、大きくで構成されます。
| レイヤー | 役割 | 主な機能例 |
| ①データソース層 | 社内・クラウド・外部サービスなど、データの発生源 | ERP・CRM・IoT・SaaSなど |
| ②統合レイヤー(ファブリック層) | メタデータをもとに各データを論理的に接続 | データ仮想化・ETL連携・API接続 |
| ③利用レイヤー | データを可視化・分析・AI活用する層 | BIツール・AI分析基盤・ダッシュボード |

この構造により、クラウドや社内システムを問わず、リアルタイムかつ横断的な分析が可能になります。そして、この仕組みを支えているのが「メタデータ管理」と「データ仮想化」です。
メタデータとは、データの保存場所・形式・更新履歴といった“データそのものを説明する情報”のことを指します。データファブリックでは、このメタデータを活用して各システムのデータを仮想的に結びつけ、必要なときに必要な情報だけを参照するため、データを移動させることなく、重複や遅延を抑えたリアルタイム分析が可能になります。
さらに、アクセス制御や監査ログといったガバナンス管理も統合でき、 既存のERPやCRMなどのシステムを置き換えることなく、安全で柔軟なデータ活用を実現します。
データメッシュ・データレイクとの違い
「データファブリック」とよく混同される用語に、「データメッシュ(Data Mesh)」 と「 データレイク(Data Lake) 」があります。
いずれも「データを活用するための基盤」という点では共通していますが、目的や構造、導入の考え方は大きく異なります。
| 比較項目 | データファブリック | データメッシュ | データレイク |
| 目的 | 分散データの統合と可視化 | 部門単位の自律的データ管理 | 大量データの一元保管 |
| 管理方法 | 技術的(自動統合) | 組織的(分散責任) | 集中保管 |
| 構成要素 | メタデータ・仮想化・API | ドメイン・データプロダクト | ストレージ・ETL |
| メリット | リアルタイム統合・ガバナンス強化 | 柔軟性・スピード | 低コスト・大容量 |
| デメリット | 実装コスト・設計の複雑さ | 品質管理・統制の難しさ | データ整理・検索性の課題 |
| 向いている組織 | クラウド連携が多い企業/複数部門連係 | 大規模組織・自律分散志向 | データ分析・AI活用中心企業 |
このように、
- データファブリック:「統合技術」
- データメッシュ:「組織運営モデル」
- データレイク:「保管場所」
として位置づけると理解しやすくなります。
データファブリックのメリットとデメリット
主なメリット
- 分散データを一元管理できる
社内外に散らばるデータを部門やクラウドをまたいで参照でき、情報の重複や整合性の問題が減少します。
(例:CRM(顧客管理システム)と監視ツールを連携し、顧客ごとのシステム稼働状況をリアルタイムで把握)
- データ活用・AI分析が容易になる
構造化/非構造化を問わずあらゆるデータにまとめてアクセスできるため、AI分析やデータを可視化するツールとの連携がスムーズになります。
(例:複数部署のデータをリアルタイムに連携し、需要予測モデルを作成)
- ガバナンスとセキュリティを強化できる
アクセス制御・監査ログ・データ分類など、ガバナンス機能を統一的に運用でき、組織全体でデータの扱い方が統一されるため情報漏えいや法令違反のリスクを大幅に軽減できる可能性があります。
(例:部署単位でアクセス権を制御し、不要なデータ閲覧を防止)
導入時のデメリット・注意点
- 初期設計・構築に時間とコストがかかる
データファブリックは単一の製品ではなく、複数システムを連携させる仕組みであるため、初期設計や環境整備に一定の時間とコストが必要です。
課題:データの整理方法(メタデータ設計)やデータの一覧化(データカタログ)に専門知識が必要
対策:PoC(小規模な検証(Proof of Concept))から始め、段階的に導入範囲を拡大する
- 運用設計・管理体制が複雑になりやすい
部門やシステム間でデータ共有を行うため、アクセス権限・責任範囲の調整が不可欠です。特に大企業や複雑な組織ほど、ルールの調整が難しくなります。
課題:アクセス権限の設定や更新ルールが複雑化しやすい
対策:ガバナンスツールの導入やデータ管理の方針を決める委員会の設置
- 専門人材の確保が必要
データファブリックは、クラウド・API・メタデータ・セキュリティなど複数領域にまたがる知識を要するため、専門人材の存在が重要です。
課題:既存メンバーだけでは対応しきれない場合がある
対策:外部パートナーの活用や研修でデータアーキテクト/エンジニアを育成
デメリットを抑えるためのポイント
- スモールスタートでPoCを実施
→ PoCで効果を確認してから範囲を拡大することで運用ノウハウを蓄積できます。
- 既存のクラウド環境を活用する
→ 既に利用しているAzureやAWSなどのクラウド環境を土台に構築すれば効率的。
- ツールよりも“運用体制”を重視する
→ 技術よりも、社内で「データを共有・活用する文化」を整えることが重要。
これらのステップを意識することで、導入初期のリスクを最小限に抑えながら、データファブリックをスムーズにデータファブリックを社内へ定着させることができます。
データファブリックの今後と活用事例
データファブリックの主な活用分野
データファブリックは、あらゆる業界で「データの分断を解消する」目的で利用されています。特に、以下のような分野で導入が進んでいます。

これらの業界では、「データがバラバラで活かせない」という課題をデータファブリックによる統合と可視化で解決しています。
代表的な活用事例
| 企業名/サービス名 | 主な特徴 | 強み | 向いている企業・用途 |
| IBM「Watsonx.data」 | AIでメタデータを解析・学習し、データの品質最適化する | データ統合、品質管理を自動化 | 製造・金融・通信など、AI分析を重視する大規模企業 |
| Microsoft「Microsoft Fabric」 | Power BI・Synapseなどを統合 | Office 365・Azureとの親和性が高い | Azure環境を活用する中堅〜大企業/DX推進企業 |
| AWS「AWS DataZone」 | カタログ型管理で共有を効率化 | セキュリティポリシーを自動適用 | 金融・医療・公共など、高いセキュリティ業界の企業 |
自社が重視する目的(AI分析・クラウド連携・セキュリティ管理)に応じて、最適なプラットフォームを選ぶことが大切です。
データファブリックの将来性とトレンド
今後、データファブリックは以下の方向に進化していくと予想されています。
- AI連携の高度化
AIがメタデータを解析し、最適な統合ルートやアクセス権限を提案。「AIがデータを管理する時代」へ移行しつつあります。 - マルチクラウド連携の標準化
AWS・Azure・Google Cloudなど、クラウドを問わず、「どこにデータがあっても同じように扱える」環境が実現。 - データメッシュとの融合
技術(ファブリック)と運用(メッシュ)の融合が進行しており、統制+自律のハイブリッド運用モデルが主流となる見込みです。 - セキュリティとガバナンスの自動化
ポリシー管理や監査をAIが自動化し、人手によるガバナンス負担を軽減。
これらのトレンドは、データファブリックが単なる技術基盤ではなく、企業のデータ戦略そのものを支える「共通インフラ」へと進化していることを示しています。特に、マルチクラウドやAIを前提としたシステム設計が当たり前になる中で、「どこにデータがあっても安全に活用できる環境づくり」が、企業の競争力を左右する時代に入っています。
まとめ
ここまで、データファブリックの意味・仕組み・他の概念との違い・メリット・活用事例・将来性を解説してきました。
データファブリックは今後、AI・IoT・生成AIなどとの連携が進み、データが自律的に整理・最適化される環境が一般化していくでしょう。企業は膨大なデータをどう活用するかという「戦略的な意思決定」に注力できるようになります。
そのためにも、今のうちから以下の2点を意識することが重要です。
- 部門横断で共有できる「データの見える化」ルールを整備する
- 将来的な、AI・クラウド連携を見据えた基盤設計を進める
データファブリックは、”データのための仕組み”ではなく、企業が未来の意思決定を支えるための仕組みです。これからのデータ戦略を考えるうえで、注目すべき概念といえるでしょう。
参考リンク
※この記事は2025年10月時点の情報に基づいて執筆されています。掲載内容は将来的に変更される可能性があります。
※本記事の情報は、各ソフトウェアの公式サイトおよび開発元のドキュメントに基づいて作成しています。
最終更新日:2025年10月29日
この記事の執筆者について:
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