この記事の信頼性:本記事は、Windows Serverを20年以上提供している「Winserver」のマーケティングチームおよび技術チームが執筆しています。実際に企業ユーザーから寄せられた設定相談やサポート事例に基づき、初心者にもわかりやすく解説しています。最終更新日:2025年6月26日機密データの保管先として近年注目されているのが、VDRと呼ばれるオンライン上の文書保存・共有サービスです。
従来M&Aにおけるデューデリジェンスにおいて利用されていましたが、最近ではDXの一環として幅広い分野でも導入が進み、中小企業でも活用されています。
本記事では、VDRの機能をファイルサーバーやクラウドストレージと比較しながら、メリットや活用シーン、導入のポイントをまとめて解説します。
対象:セキュリティ重視のIT担当者の方
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目次
VDRとは
概要
VDR(バーチャル・データ・ルーム/Virtual Data Room)は、主にM&A(合併・買収)におけるデューデリジェンスなど機密情報の共有が必要なビジネスシーンで使われる、高セキュリティなオンラインデータ共有サービスです。
クラウド上に構築されており、インターネット接続があれば、パソコンやスマートフォンを通じて場所を問わずアクセスすることができます。
参考:紙の書類を鍵のかかった部屋に保管する方法をPDR(Physical Data Room)と呼ばれ、VDRはPDRを仮想化したものになります。
デューデリジェンスとは
デューデリジェンスとは、M&A(企業の合併・買収)や投資の際に、買い手が対象企業(売り手)やその事業について事前に詳しく調査・分析することをいいます。
本当にこの会社を買収してよいのか、買収金額が妥当なのか、などを精査して見極めるプロセスです。
法務や金融の専門家によるチームが組織され、決算書や定款、申告書などの資料と、質問をまとめたQ&Aリストを売り手企業側にリクエストします。
面談も含めて複数回のやり取りが行われ、最終交渉に至ります。
VDRは、決算書などの機密文書を電子的に保存・共有し、Q&Aをやり取りするためのプラットフォームとなります。
成長するVDR市場
VDRは近年、デューデリジェンスに限らず、複数の関係機関で機密情報をやり取りするシーンで活用が期待されています。
具体的には、不動産、銀行、法務、製薬、医療などの業界で、不動産取引、裁判、特許・知財、共同研究開発などがあげられます。
米国MarketsandMarkets社の市場調査レポート(※)によると、世界のVDR市場規模は2021年から2026年の5年間で16億ドルから32億ドルに倍増するだろうと予測されています。
機密文書のデジタル化が進むなかで、高セキュリティ、高コンプライアンスなVDRに対するニーズが増えていることを示しています。
VDRの5つの特徴
高セキュリティ
VDRのセキュリティレベルは高く、データ保存・通信時における強力な暗号化、2段階認証、文書単位、ユーザー単位、時間単位、IPアドレス単位での詳細なアクセス制限機能を備えています。
詳細な監視ログ
VDRはアクセス追跡や監視の機能も充実しています。ユーザーごとの文書閲覧や操作状況だけでなく、閲覧時間や詳細な操作ログを追跡でき、高い監査性を確保します。
文書保護機能
閲覧専用モードに加え、ウォーターマークの自動付与、ダウンロード/印刷の制御といった保護機能を文書単位で設定することが可能です。
Q&A機能
デューデリジェンスに必要な閲覧者と情報提供者との質疑応答をVDR内で一元管理するQ&A機能が備わっています。
また、共同編集やレビューなどのコラボレーション機能が充実しているサービスもあり、効率的な情報共有が可能です。
コンプライアンス準拠
金融・法務・医療分野など各業界に対応した、以下のような国際レベルの規制要件に準拠したサービスも多くあります。
・ISO27001:世界で最も採用されているセキュリティ規格
・GDPR:EUの個人情報保護規則
・SOC 2:アメリカ公認会計士協会によるセキュリティ評価基準
・HIPAA:医療情報保護に関する法律
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クラウドストレージ、ファイルサーバーとの比較
VDRは、Google DriveやOneDriveなどのクラウドストレージや、自社内のファイルサーバーと共通しています。
機能や特徴においてクラウドストレージやファイルサーバーとの違いを比較してみましょう。
比較表
機能項目 | VDR | クラウドストレージ | ファイルサーバー |
アクセス制御 | 極めて細かい | 標準的 | 標準的 |
監査ログ | 完全なトラッキング | 限定的 | 限定的 |
ウォーターマーク | 自動付与 | 一部対応 | × |
DL・印刷制限 | 対応 | 一部対応 | 困難 |
バージョン管理 | 対応 | 対応 | 手動対応 |
法的証拠力準拠 | 対応 | 一部対応 | × |
Q&A機能 | 対応 | × | × |
クラウドストレージやファイルサーバーでもユーザーごとのアクセス制御は可能ですが、「アクセス不可/読み取り専用/編集可能」といった基本的な設定レベルにとどまります。
一方、VDRでは段階的なアクセス制御、全てのアクティビティを追跡できるログや、ウォーターマークの自動付与など、情報漏洩を徹底して抑止する細かいセキュリティを設定できるのが特徴です。
メリットとデメリット
メリット
・高セキュリティによる文書保護
様々なコンプライアンス規制に準拠したハイレベルのセキュリティ機能。
保管中、転送中の文書に対する暗号化、自動ウォーターマーク付与により、不正使用や漏洩を抑止します。
・ユーザー行動の追跡、監視
ログインからログアウトまでの操作履歴を詳細に記録。
たとえ文書のダウンロード後であっても、権限の事後はく奪による閲覧制限が可能なサービスもあります。
・M&Aに特化した機能
デューデリジェンスプロセスをスムーズに遂行するための、Q&A一元管理機能や、プロジェクトの終了後の完全アクセス遮断処理など、M&A特有のニーズに対応しています。
デメリット
・高コスト
データ容量やユーザー数に応じた課金が発生し、高機能だとさらにコストアップ。
利用料はおおむね月額数万以上から設定されており、クラウドストレージに比べると高額。
・紙媒体の電子化
既存の紙媒体が多い場合は、VDR導入前にペーパーレス化や業務プロセスのDXといった取り組みが必要になる。
ファイルサーバー、クラウドストレージについては以下の記事で紹介していますので、合わせて参考にしてください。

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導入・活用のポイント
VDR導入を検討すべきかの判断基準
VDRの高セキュリティは魅力的ですが、せっかく導入しても機能を持て余してしまっては意味がありません。
どのようなケースにおいてVDRの利用が適しているのでしょうか?
・M&Aや不動産取引など、機密性の高いプロジェクトで文書を管理したい場合
→VDRはもともとデューデリジェンス向けに設計されており、高いコンプライアンスが求められる業務に適しています。
・社外と機密情報を継続的に共有する必要がある場合
→複数のステークホルダーと文書を共有する際にVDRの高度なセキュリティ機能が役立つ反面、一時的なファイル送信であれば、VDRを使わなくてもファイル転送サービスで十分な場合もあります。
・細かな閲覧履歴や監査ログを管理したい場合
→クラウドストレージでは対応しきれないレベルの追跡、ログ管理や、細かいアクセス制御が必要な場合は導入に向いているが、単なる履歴の記録や社外アクセスの制限のみが目的であれば、
他の手段で対応可能です。
【IT担当者向け確認ポイント】
まずは自社にとってのニーズを解析し、文書管理にどれだけ高度なセキュリティ基準が必要なのか、それはクラウドストレージやファイルサーバーでは実現できないのかを見極めて導入を検討しておきたいところです。
同時に、VDRが運用できる業務プロセス、体制の整備も必要です。
・そもそも文書のデジタル化が進んでいない
・既存のファイル置き場のセキュリティ管理が厳格に運用できていない
このような状況では、VDRを導入しても運用が難しい可能性があります。
VDR導入時の確認ポイント
様々なVDRが提供されていますが、主要プロバイダーは海外の業者がほとんどです。
導入にあたって以下のポイントをしっかり確認しましょう。
・セキュリティ基準の適合性
必要なセキュリティ要件(ISO、ISMSなど)を満たしているか、コンプライアンス基準が日本国内に適応しているかを確認しておきましょう。
・操作性
直感的に操作しやすいか、大量のファイルから目的の文書をスムーズに検索しやすいかが重要です。
・国内にサーバーがあるか
金融や医療業界などは国内にデータを置くことが求められる傾向にあるため、データの所在を事前に確認しておきましょう。
・サポート体制(日本語対応の有無)
サポート体制が充実しており、トラブル発生時に迅速な対応が期待できる体制が整っているかがポイントです。
・コストの透明性
初期費用や月額料金、追加課金の有無などが明確か、仕組みをチェックしましょう。
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まとめ
高いアクセス利便性と強固なセキュリティ機能を備えたVDRは、機密情報の保管、共有手段としてビジネスシーンで採用が進んでいます。
しかし、流行に乗って安易に導入すると、期待した効果が得られずコストが無駄になってしまうため、VDRの機能とメリットをよく理解したうえで、自社に導入すべきかどうか判断することが必要です。
もともと用途が特化されているサービスですので、導入の可否を判断する際には、本記事を参考に検討してみてください。
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