ポスト量子暗号(PQC)とは?量子コンピューター時代のセキュリティ対策

従来のコンピューターと比べ、極めて高速な計算が可能な量子コンピューターは、次世代のコンピューター技術として大きな注目を集めています。

そして、その量子コンピューターの実用化に欠かせない技術が、量子暗号技術です。

本記事では、量子コンピューターの脅威に対応するための新しい暗号技術であるホスト量子暗号(PQC)について、その目的や登場の背景、実用化までの課題を詳しく解説します。

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ポスト量子暗号(PQC)とは

量子コンピューターとポスト量子暗号の関係

まず、ポスト量子暗号の理解には、量子コンピューターの基礎知識が欠かせません。

量子コンピューターとは、量子力学の原理を応用したコンピューターのことです。

従来のコンピューターが”0”と”1”のどちらかで情報を処理するのに対し、量子コンピューターは”量子ビット(キュービット)“と呼ばれる単位で、同時に”0”と”1”両方の状態をとることができます。

この特性により、量子コンピューターは従来型に比べはるかに少ない計算回数で処理を進めることができ、非常に高速な処理が可能になります。

例えば、従来のコンピューターでは8年かかる計算を、量子コンピューターではわずか1~2時間で計算したという事例もあります。

このような能力は、医療・金融・科学シミュレーションなどの幅広い分野での応用が期待されており、2030年~2040年頃には本格的な実用化が進むと予測されています。

こうした量子コンピューターに既存の暗号技術が破られてしまうリスクを踏まえ、開発が進められているのが「ポスト量子暗号(Post-Quantum Cryptography)」です。

これは、量子コンピューターによる解析にも耐性のある暗号化方式であり、従来の暗号技術に置き換わる次世代のセキュリティ技術として注目されています。

関連記事:量子コンピューターとは。実用化でどうなる?仕組みをわかりやすく解説

ポスト量子暗号が求められる背景

現在、広く使われている暗号技術には、RSA暗号や楕円曲線暗号(ECC)などの公開鍵暗号方式があります。

これらは、膨大な計算量を必要とする数学的問題に基づいており、従来のコンピューターでは解読に数百万年かかるとされています。

しかし、量子コンピューターの高速処理能力を用いれば、これらの暗号を数時間程度で解読可能とされており、既存の暗号技術では機密性を維持できなくなる恐れがあります。

そのため、量子コンピューターの実用化前に、量子コンピューターでも解読困難な暗号方式の導入が急務となっています。それが、ポスト電子暗号(PQC)です。

ポスト量子暗号と従来の暗号との違い

従来の暗号技術では、「暗号鍵」と「公開鍵」の組み合わせによる非対称暗号方式が採用されており、第三者による解読を防ぐ安全性が確立されていました。

しかし、量子コンピューターがこれらの暗号を解読できるようになると、公開鍵から秘密鍵を逆算できてしまう危険性が生じます。

ポスト量子暗号では、量子コンピューターでも解読が困難な数学的問題に基づいた新たな暗号方式が検討・導入されています。

例えば、以下のようなアプローチがあります。

・グリッド(格子)暗号:最短ベクトル問題など、計算が極めて困難な問題に基づく方式
・ハッシュベース暗号:ハッシュ関数の一方向性(戻せない性質)を活用
・コードベース暗号:誤り訂正符号に関する復号問題の難解性を利用
・多変量多項式暗号:多変数の方程式系を解くのが困難であるという特性を利用(MQ問題)

これらのアプローチにより、ポスト量子暗号は量子時代にも耐えうる堅牢なセキュリティを実現しようとしています。

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実用化に向けての課題

鍵サイズの肥大化

ポスト量子暗号の導入における大きな課題の1つが、鍵のサイズが従来のものと比べて大きくなる傾向があることです。

例えば、従来の暗号方式であるRSA-2048の公開鍵は約256バイトですが、ポスト量子暗号の場合は数キロバイトから数メガバイト規模になるとも言われています。

鍵サイズの肥大化により、以下のような問題が発生します。

・ストレージ容量の圧迫
・計算リソースの増大
・通信速度の低下

特に、IoTデバイスやモバイル機器などのリソースが限られた環境では、大きな鍵を扱うことが難しく、実用化へのハードルとなっています。

安全性の検証が不十分

従来の暗号方式は、長年にわたる研究や運用実績により安全性が検証されてきました。

一方、ポスト量子暗号は理論上は量子コンピューターでも解読が困難といわれているものの、実際に運用した実績がないため、安全性が十分に検証できていません。

量子技術自体が今後ますます発展する可能性があり、それにより将来的には未知の攻撃手法により脆弱性が発見されることも考えられます。

このため、ポスト量子暗号の安全性評価と研究、多層的なセキュリティ対策の併用、リスクを想定した実証実験の推進といった対策が求められています。

既存システムとの互換性

ポスト量子暗号を実用化する際には、既存の暗号システムとの互換性の確保が不可欠です。

多くの企業や組織では従来の暗号方式をベースとしたシステムが運用されており、これらを全面的に切り替えるには大規模な改修作業が必要となります。

例えば、計算リソースの確保のためのハードウェアの交換やソフトウェア・通信プロトコルの改修などが必要であり、移行による多くのコストや時間も求められます。

これらの負担を軽減するためには、従来の暗号方式とポスト量子暗号を併用しながら段階的に移行する戦略が重要です。

現実的な運用に向けて、柔軟な導入体制の構築が求められています。

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3.ポスト量子暗号の主な取り組み

NISTによる標準化活動

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、2016年からポスト量子暗号の標準化プロジェクトを主導し、開発と評価を進めています。

NISTでは「現在の公開鍵暗号方式の配備に20年かかったため、量子コンピューターの実用化を正確に予測できなくとも、早期に着手する必要がある」とし、早期からの対策が不可欠と判断しています。

その取り組みの成果として、2024年には3つの暗号アルゴリズムに関する標準化文書が公開され、いよいよ本格的な導入フェーズへと移行しつつあります。

Googleによる実装と検証

Googleもポスト量子暗号の実装・検証を積極的に推進している企業の一つです。

2016年には、Chromeブラウザにおいて実験的にポスト量子鍵交換方式を用いた暗号通信のテストを実施。

その後も改良を重ね、2024年にはPC版Chromeおよび一部サーバー環境において正式に有効化されています。

さらにGoogleでは、安全で扱いやすい暗号 API を提供するオープンソースライブラリの開発も行っており、C++向けに試験的なポスト量子暗号アルゴリズムの提供も始めています。

今後もGoogleは、同社の製品群で利用可能な正式かつ検証済みのポスト量子暗号実装を継続的に開発・展開していく方針です。

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まとめ

本記事では、ポスト量子暗号(PQC)について、その概要や必要性、課題、そして国内外の取り組みを解説しました。

ポスト量子暗号とは、量子力学の原理を応用した新たな暗号技術であり、次世代のコンピューターと言われる量子コンピューターによっても容易には解読できない技術として注目されています。

量子コンピューターは、従来のコンピューターをはるかに上回る処理能力を持ち、既存の暗号技術を短時間で破る可能性があります。

そのため、従来型の暗号に代わるセキュリティ技術として、ポスト量子暗号の導入が急務となっています。

一方で、鍵のサイズの肥大化や、既存システムとの互換性といった課題もあり、実用化に向けてはさらなる技術的・運用的な検証が必要です。

量子コンピューターの実用化は、2030年〜2040年頃と予測されています。

それまでに十分な準備を整え、セキュリティ技術の移行を進めていくことが求められるでしょう。

未来の情報セキュリティを守るために、今からの備えが重要です。

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